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飾り窓

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はじめに、林本源庭園漏窗賞析

はじめに 
 
園林の中の壁は「景牆」(牆=日本語の「壁」を指す)とも言われ、用途別に分類すると、囲牆、院牆、廊牆等に分けられ、主に園林内外や各景観スポットの間を仕切るための役割を果たします。壁のデザインは多様化しており、波の形をした雲牆や階段状の階梯牆、巻物のような形をした書卷牆等があります。また、壁の表面にはよく漏窓(透かし窓)、門洞(門の大きさほどの穴)、空窓などが設けられ、採光性や通気性といった実用性のほか、視覚的にも芸術感も醸し出します。

 

漏窓(透かし窓)は花窓とも言われ、中国建築の中では特別な芸術項目でもあります。施工方法は通常、前もって壁に穴をくり抜き、それに組み立てた棒で主体を支えてから土石で固め、レンガで窓の輪郭を磨きだします。それから窓を壁にはめ込み、泥で細部まで仕上げた後、彩色を施します。細長い木の棒を組み立てて造った、様々な形の漏窓もあります。

 

優美なデザインをした漏窓は観賞できるほか、壁を透かしていることによって、視線に隔たりが少なく、空間が繋がっているような印象を与える反面、景色が見え隠れすることで園邸の景観に深みを増し、奥ゆかしくて上品な庭園造景芸術を演出します。

 

林本源園邸の漏窓は種類が多くデザインが優美なため、台湾邸宅の白眉と言えます。漏窓の模様は上品で縁起の良いものを象徴することが多いです。

 

形式は以下の四種類に分けられます。

一、器物類:古錢、花瓶、鼎、扇子、書物等。

二、動物類:コウモリ、蝶、螭虎(龍)等。

三、植物類:竹、蓮、仏手、桃、ザクロ、かぼちゃ等。

四、図案類:長い盤、寿、卍、氷裂紋等。

方 亭:瓶形、カイドウ形。

瓶形-瓶形容器の內部上下にそれぞれ氷裂紋の模様があり、中央の部分に甲羅紋がある。その下には「工」の字を次々と繋ぎ合わせて、寿命を延ばすという意味を示している。瓶の口の部分は霊芝模様の装飾が施され、如意を象徴する。よって、この瓶形の漏窓はいつまでも安らぎが万年まで続き、いつまでも物事が思い通りになるように願う気持ちが込められている。

カイドウ形-海棠(カイドウ)の棠と堂は同じ読みで、富みと名誉に恵まれるという意味がある。真ん中にあるのは柿のへたで、「卍」の字を崩した形がその四隅にあり、完全無欠という寓意が含まれている。この漏窓には常しえに富みと名誉の恵みあれという意味を孕んでいる。

方鑑斎:竹節状の漏窓。
竹節状の漏窓-庭園技巧において、漏窓は景観を絵のように枠で囲む役割を持っており、山水建築と自然景観を結合させることで造景芸術を表現する際のポイントとなっています。竹節窓から外を覗くと、七弦竹の緑が目に鮮やかに飛び込み、竹の中に竹があるという遊び心で一杯。

来青閣:壺形、鼎形、瓶・缶形、仏手瓜(ハヤトウリ)、蓮の花、蓮の葉
鼎形漏窓は-夏王朝を開いた禹は9つの青銅の鼎(かなえ)をつくったといわれているため、鼎は権力の象徴となった。その後、廟宇の香炉も鼎の形を採用するようになったため、鼎は国の重器として、また神器の一つとして重宝されるようになった。来青閣の鼎形漏窓を見ると、足元に机があるので、お香を焚いて祈願するために使われた香炉と見られ、吉祥(めでたいこと)を守る宝物で、子孫が絶えることなく続くという意味が含まれている。


壺(かめ、缶)形-甕・缶は古代から食物や宝物を貯蔵するための容器であったため、金庫を象徴する。容器のそばに如意があり、その上には柿が一つある。金庫にどんどんお金が貯まるという寓意が含まれている。


瓶缶形-瓶形漏窓は平穏無事の願いが込められており、中国語で缶と官の読みが同じで、缶の後ろには巻物とハスの葉が見られる。巻物は文人であることを、また、ハスの葉は俗世の欲にまみれず清らかに生きることを象徴し、青蓮(泥から生えた気高いハスの花)は清廉と同じ読みであることから、清廉の意があり、この漏窓は金庫に無事お金が貯まることと官吏になっても清廉であるという寓意が含まれている。


仏手瓜-仏手は一種の果実で、実のかたちが仏の手のようなかたちをしているところから俗に仏手柑と呼ばれている。黄色で艶があり、芳しい香りを漂わせる、仏様にお供えする果物。また、中国語で仏手は福・寿と発音が似ているので、祝福祈願するというめでたい意味がある。


ハスの花-来青閣前の庭の両側にある雲牆(牆=日本語の壁)にはそれぞれハスの花の形から発展した幾何学模様があり、古来から泥の汚れに染まらずに気高く生えるハスの花は文人から愛された。また、両側にあるハスの花の漏窓が互いに呼応し合い、「連連発(より一層発達する)」という寓意が込められている。


ハスの葉-来青閣の左側にある庭の雲牆(牆=日本語の壁)にハスの葉の形をした漏窓があり、泥の汚れに染まらないで生えるハスの葉は、清廉な人柄であることを象徴する。

橫虹臥月:如意形、瓶缶形。                                                              
如意形-如意は仏教と共にインドに伝来したもので、僧侶が説法するときに要点を書き記すための物だったが、その後、菩薩様が持っている仏具の中の一つとなった。また、背中を掻くのに使われた孫の手や古代の文官が上奏する時に要点を書き記されたものも如意の形をしており、人を統率することや危険から身を守ることができることから如意と名付けられた。


瓶缶形-来青閣から香玉簃へ向かう回廊を曲がったところに、瓶の半分の形をした漏窓があり、平穏無事であることを象徴し、その下に案几(低い机)が見える。そのそばにも缶の形をした漏窓があり、ふたの上には果物のへたと如意で装飾されている。「瓶」、「案」、「缶」、「蒂」の四文字の読みが「平安官第」と似ていることから、官邸が日々平穏であることを願いが込められている。

香玉簃:双錢形、双桃形、十全漏窓。

双銭形-昔のお金の模した形で、福を象徴する。また、金銭は古代では泉布と呼ばれており、泉と全の読みが似ていることから、双銭は双全(両方とも備えている)を意味し、さらにその隣に見える二つの桃(長寿を意味する)の形をした漏窓を合わせて、幸福で長命であるという寓意が含まれている。

 

双桃形-西王母の瑤池で育てられた仙桃は、食べたら六百年余り寿命が延びると言われているため、桃は長寿を象徴する。また、桃の花はよく女性の美貌を喩えるのに使われる。民間神話でも桃の木は魔よけ・厄除けのシンボルとなっているので、二つの桃の漏窓は長寿、生命力、安らぎを意味する。

 

十全漏窓-昔から古銭十枚にそれぞれ縁起の良い文字―すなわち、福、禄、寿、父、母、身(自分自身)、妻、児(息子)女(娘)、孫―を入れて、十全図と呼んでいた。この上ない幸せを実感して満足できるという願いが込められている。

観稼楼:かぼちゃ形、橘形、ザクロ形、氷裂紋、甲羅紋、竹節漏窓。

 

瓠瓜(ヒョウタン)形-形が丸くいくらでも入る入れ物に似ている。中国語で瓠は福と発音が似ているため、古くから人々に愛された縁起の良い模様である。「福」を象徴し、金庫が金銀・財宝で一杯、子孫が絶えることなく続くようにという願いが込められている。

 

かぼちゃは閩南語で金瓜と読み、「禄」を得られることを象徴する。

 

桃形-伝説によると、西王母の瑤池で植えられた仙桃を食べると六百年余りの寿命が延びると言われているため、仙桃のように造られた桃形漏窓は、長「寿」を意味する。

 

ザクロ形-安石榴とも呼ばれ、果肉は豊満で鮮やかな紅色をしている。種が多く透明感に溢れており、昔から多子多孫の寓意が含まれていた。女性が嫁いだ時に、新婦の家から新郎の家にザクロを送り、子宝に速く恵まれることを祈願する意味合いが込められている。「喜」ばしい事が沢山起こるようにと願う意味が込められている。

氷裂紋-昔は観稼楼を登って遠く眺めると、一面の田んぼで人々が農作に勤しむ様子が見られた。イネを栽培する稲田は充足した水が欠かせないので、観稼楼に氷裂紋の窓を三つ造り、春に氷が解けた窓の模様は、田畑を灌漑して豊作になるよう、尽きることのない水源があるという願いが込められている。

 

甲羅紋-亀、竜、鳳凰、麒麟は合わせて四霊といわれ、特徴として、竜は本来の形を変えて種々の姿を現すこと、鳳凰は乱を治めること、亀はめでたい兆し、麒麟は情け深く寛大な性格を象徴する。鶴は千年、亀は万年とのことわざがあるように亀と鶴は昔から長寿の動物とされてきた。

 

竹節漏窓-竹は冬になると、他の草木が枯れ落ちても、動じることなく立っているため、松と梅と合わせて歳寒三友(さいかんさんゆう)と呼ばれ、変わらぬ友情をたとえている。竹の節のように気節があり、毅然と立つ姿は柔と剛を併せ持った気骨のある君子を象徴する。

定靜堂:蝴蝶形、蝙蝠形、書卷形。

蝴蝶形-定静堂前庭の両側にある花牆(牆=日本語の壁)に、蝙蝠(コウモリ)と蝴蝶が二匹ずつある。中国語で「蝠」と「蝴」は「福」と発音が近く、「四」は「賜」と発音が似ているので、四つの漏窓を造り、それらを合わせて「賜福(福を授かる)」を意味する。左側の漏窓は羽ばたいている様子、右側の漏窓は止まっている様子に造られており、いつまでも自由自在に生き続けることを意味する。

 

書巻形-昔、文人が使っていた琴、碁、書、画を四芸と称していた。文人は苦労をして学問に励み、科挙に合格すると朝廷に仕え、人の生死を決める権利を持つようになる。これにより、四芸は鎮宅や魔よけの宝物に発展した。前庭の囲牆にある書巻形の漏窓は、両側に巻物の軸があり、中央の窓の中は甲羅模様で、左右の窓は八卦の乾卦の模様で装飾しており、工夫を凝らした作品である。

月波水榭:扇形。

扇形-中国語で扇は善と同じ発音で、また、八仙の中の一人である鐘離が持っていたため、道家の八つの宝物の中の一つでもある。福縁善慶(幸福は善い行いにより生ずる)という意味がある。

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